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基板の映像をテレビに映す/録画する
AD725 RGB to NTSC ビデオエンコーダの製作

2010年1月
「基板をテレビに映して楽しみたい、プレイ映像を録画したい。」
それを実現する、ビデオエンコーダを製作しました。
基板のアナログRGB信号をNTSCビデオ信号に変換します。

10年前ならCXA1645を使って製作でき、そのようなキットも販売されていました。
現在ではCXA1645はとっくにディスコン、入手困難です。
ではそれに代わるICは何か、同じ物を作れるか、ということでやってみました。

この記事では製作したビデオエンコーダの回路図、部品一覧を公開しています。
解説にはちょっとコラム風の脱線話も混ぜてみました。
記事中では基板を録画する話として書いていますが、テレビに映すのも同じ事なので
その都度読み替えてください。「録画する」→「テレビに映す」

【キーワード】
AD725ビデオエンコーダ、ビデオコンバータ、アナログRGB、NTSC、
アーケード基板、基板 録画、基板 テレビ、ビデオ出力、KIC'S-91、
LM340T5、HD74HC04P、ダイセン D016、CXA1645、CXA1621

製作前に

■話の前提として…
近年、テレビ放送や映像ソフトはHD(High Definition)が主流になってきています。そういった映像環境で基板を録画するときは、HD対応機器に合わせて基板の出力をトランスコードするのが今時のやり方です。
しかしこの記事では、水平周波数15kHzの基板を従来の(HDTVではない)テレビ、録画機器、PCのキャプチャカードにつなぐものとして話を進めます。今回の製作が、従来の映像環境で利用してきた物と同等の物を作るという趣旨だからです。

■水平周波数
基板の映像を録画機器へ入力するには、まず映像の水平周波数が15kHzでないといけません。
ビデオデッキ、HDDレコーダー、PCのビデオキャプチャなどは15kHzの信号を受け取るようにできています(HD映像の録画は話が違います)。

Type-XなどJVS規格のシステム基板でリリースされるタイトルでは、水平周波数は31kHzが主流です。これを録画するにはダウンスキャンコンバータで15kHzに変換する必要があります(RGB-31kHz → RGB-15kHz)。映像出力が31kHz/15kHz両対応のタイトルは15kHzモードで起動してください。

一方、JAMMA規格の基板もまだ現役です。こちらはほとんどのタイトルが水平周波数15kHzです。
しかし例外的に水平周波数が24kHzの基板があります。これを録画するにはアップスキャンコンバータ/ダウンスキャンコンバータを組み合わせて何とか15kHzに変換する必要があるのですが、上手く変換できない場合もあります。24kHzの基板を録画するときは、はっきり言って諦めも大事です。

24kHzといえば
1995年頃まで日本ではPC-9801という、画面出力が24kHzのPCが広く使われていました。その後PCの画面出力は31kHz以上が普通となって行きますが、PC-9801を継続して利用したいユーザーに向けて、31kHz用PCモニタにPC-9801の画面を映す24kHz→31kHzのアップスキャンコンバータが販売されていました。マイコンソフト社の「XRGB」シリーズが有名です。
そして、そのような24kHz対応の(PCでの利用を想定した)スキャンコンバータを基板でも利用しようと考えるわけです。しかし基板が出力する24kHzが、PC-9801が出力する24kHzと一致しているとは限らないので(基板によって微妙に違っていて当たり前)、アップスキャンコンバータを通しても上手く31kHzの映像に変換できないことがあります。もちろんその先の31kHz→15kHzの変換も無意味です。
24kHzの基板を録画するのは15kHz/31kHzの基板より難しいのです。

当時、私はPC-9801FAを使っていました。モニタはPC-TV455、15kHz/24kHz/31kHzの3モードスキャンです。これに24kHzの基板(SEGA model2)を「映す」ことは簡単でした。録画はできませんでした。
また、現在も使っている筐体抜き出しの29インチRGBモニタは15kHz/24kHzの2モード対応なので、これにPC-9801の画面を映すこともできました。PCゲーム大画面大迫力。


■信号形式
録画するには水平周波数の他に信号形式も合わせないといけません。
基板からの映像出力はアナログRGB形式です。録画機器へ入力するのは基本的にNTSC規格のビデオ信号です。黄色い端子でお馴染みのコンポジットビデオやSビデオ信号で入力します。
従って基板の映像を録画するにはRGBからNTCSに変換する仕組みが必要になります。

そのような製品が既にあります。
マイコンソフト社の「XAV-2s」というビデオエンコーダです。(2010年12月現在販売中)
http://www.micomsoft.co.jp/xav-2s.htm
aitendoブランドの「RGB->VIDEOコンバータ[RGB-VIDEO-CV04]」という半完成キットもあります。(2010年1月現在販売中) http://www.aitendo.co.jp/product/565 完売
aitendoブランドの「RGB->VIDEOコンバータ[RGB-VIDEO-CV04N]」とういう半完成キットもあります。(2010年12月現在販売中)
http://www.aitendo.co.jp/product/2126

特に自作にこだわらなければ、これらの機器を購入して、基板とテレビ/録画機器を接続して、目的達成です。この記事も終わり。
…ですが、ここは電子工作をするサイトなので、製品を購入しない場合の話を進めます。
お待たせしました。ここからが製作の本題です。

ビデオエンコーダIC AD725

■ビデオエンコーダ
製品を使わず同様の機器を自作するには、ビデオエンコーダという種類のICを使います。
2000年頃まで秋葉原の秋月電子でRGB→NTSCビデオコンバータのキットが販売されていました。
CXA1645というビデオエンコーダICを使ったキットで、説明書の奥付には「2000/09」と書いてあります。残念ながらこのキットは現在販売されていません。
CXA1645はプレステやサターンにも使われていたICです。


逆のコンバータもあり
逆の働きをするコンバータ(NTSC→RGB)は現在も秋月で販売されています。ただしそれは基板の録画と関係ありません。ビデオ映像を筐体などのRGBモニタ(15kHz入力の)に映す用途で使うものです。

話の脱線ついでに…
現在販売しているそのコンバータ「ビデオ信号→アナログRGBコンバータ・ユニット(Ver.2)」の前(Ver.1にあたるもの)はCXA1621を使ったキットでした。

入力をコンポジットビデオとSビデオで切り替えられるよう改造し、今も使っています。
確認しておきますが、今回製作するのはこれではありませんよ!


ビデオエンコーダのキットがなくてもCXA1645を使って同じ物を自作できないか?
…残念ながらCXA1645は既にディスコン(生産終了)、入手困難なICとなっています。
ジャンクでプレステやサターンを探してICだけ再利用すれば?
…既に確保しているならそれでよいですが、今となってはジャンク品も入手困難です。

幸いRGB→NTSCのビデオエンコーダICはCXA1645だけでなく、現在も入手できるICが何種類かあるようです。例えば「RGB NTSC ビデオエンコーダ」で検索すると、ANALOG DEVICES社のAD723/AD724/AD725が見つかります。
今回の製作ではAD725ARを使いました。2009年5月、イーエレで購入。

■AD723/AD724/AD725
AD723
http://www.analog.com/jp/audiovideo-products/video-encoders/ad723/products/product.html
28ピンTSSOPパッケージ。4FSCクロックを入力して使う。電源は2.7〜5.5V
AD724
http://www.analog.com/jp/audiovideo-products/video-encoders/ad724/products/product.html
16ピンSOICパッケージ。FSCまたは4FSCクロックを入力して使う。電源は5V
AD725
http://www.analog.com/jp/audiovideo-products/video-encoders/ad725/products/product.html
AD724を4FSCクロック専用にし、少し機能を加えたもの。
コンポジットビデオ出力を向上させる輝度トラップを追加で組み込める(Sビデオ出力には関係なし)。

FSCとはビデオ信号のカラーサブキャリアの周波数のことで3.579545MHzです。4FSCはその4倍で14.31818MHzです。
どちらもこの値ズバリのクリスタル発振子があります。それで発振回路を組んでICへ入力します。

発振回路を組むとき、クリスタルの足にトリマコンデンサ(可変容量コンデンサ)を並列に付ければ微妙な周波数調整ができるようになります。
発振器(オシレータ)を使えば発振回路を組む手間が省けますが、相手が基板なので場合によっては残念なことになります。基板は映像周波数のばらつきが激しいので、ビデオエンコーダに周波数を微調整できる機能を持たせた方がよいかもしれません。
ここで言う周波数の微調整機能とは、発振回路に細工をして14.31818MHz付近で微妙に周波数を変更する仕組みのことです。スキャンコンバータの意味ではありません。

まずは手軽にオシレータを使って製作し、基板をテレビに映してみて微妙に惜しい感じの映りだったら微調整の効く発振回路に取り替えてみることにします。

■AD725データシートの内容について
AD725には日本語のデータシートがあります。このデータシートがすごい!
ビデオエンコーダの参考書かと思うほど1冊丸ごと詳しくて分かりやすいです。隅々まで読むことをお勧めします。
以下、注意点をいくつか。

4ページ「ピンの説明」
説明文がおかしいところがあります。
ピン 名称 説明
15 VSYNC 垂直同期信号(+2 V超にセットされた外部CSYNCを使用する場合)。
TTLロジック・レベル。
説明文のカッコ内は正しくはこうです。
 (外部CSYNCを使用する場合、+2 V超にセットする)
 原文:(if using external CSYNC set at > +2 V)

外部CSYNCを使用する場合はVSYNCをロジック・ハイに固定し、HSYNC(ピン16)にCSYNC信号を入力するということです。

12ページ「TV上でのVGA出力の表示」
勘違いしないよう説明をよく読んでください。PCの画面をテレビに映せるようなことが書いてありますが、これはビデオカードから15kHzインターレース出力ができることが前提です。通常のVGA画面(ノンインターレース31kHz)の信号をAD725に入力しても正常なビデオ信号は出力されません。

アナログ・デバイセズ社は1998年2月4日のニュースリリースでAD725の発売を発表しました。
当時のPCにはドライバの設定で15kHzインターレース出力ができるビデオカードがちらほらあったようです。データシートはその時代のパソコン事情に基づいて書いてあります。今時の感覚で31kHzのつもりで読むと、このビデオエンコーダを正しく使えません。
AD723/AD724/AD725にスキャンコンバータ(周波数変換)の機能はありません。あくまで15kHzのアナログRGB信号をNTSCビデオ信号にエンコードするためのICです。

PCの画面出力
上に掲載した写真で、秋月のキットに「200ライン専用(15.75kHz)」と書いてありますね。この説明が指すPCの解像度は640x200です。
その上の解像度は640x400で、対応するモニタは400ラインモニタと呼ばれていました。
1990年代後半には15kHzや24kHz出力のPCは消え、31kHzが普通となりました。解像度はお馴染み640x480です。
秋月のキットはその頃まで販売していたので、「(31kHzの)PCの画面がテレビに映せる!」と勘違いされないよう、キットに大きく注意書きしていたのでしょう。お客さんが理解してくれたかどうかはともかくとして。
ちなみに解像度640x200はPC-8801で、640x400はPC-9801で標準の解像度です。


心構え

■ビデオエンコーダ製作前の注意事項
後回しになりましたが、ある意味一番重要なことを説明します。
基板の映像出力の周波数には明確な規定がないので、基板メーカーが独自に作り込んでいます。そのため正しい周波数のビデオ信号に変換できず、テレビに映したり録画することが困難な基板が多々あります。具体的には、白黒になる、虹色になる、画面からはみ出す、ゆがむ、そもそも映らない、などの症状が出ます。テレビや録画機器側の調整で改善することもありますが、大抵はどうにもなりません。
先述の「XAV-2s」には周波数微調整の設定が何段階もありますが、それでもフォローできない基板はあります。そのような基板をテレビに映したり録画することは諦めてください。基板の設計上、どうしようもないのです。

筐体のモニタが「ちょっとおかしな周波数の基板」でも画面を映すことができるのは、テレビや録画機器より幅広い周波数に対応できるよう作られているからです。おかしな周波数を正しい周波数に直しているのではなく、モニタをおかしな周波数に合わせているのです。
従って、モニタにちゃんと映っているからといって、モニタの配線から信号を横取りして録画しようとしても、おかしな周波数のままなのでやっぱり録画できません。

製作

■材料確認と準備
左の写真…左:発振器(発振回路)、中:変換基板とAD725AR、右:コンデンサと抵抗。
中の写真…変換基板とAD725AR。
本体の製作を始める前にAD725を変換基板に取り付け、DIPパッケージのICのように扱えるようにしておきます(右の写真)。


■AD725のハンダ付けについて
ダイセンの変換基板「D016」の1.27mmピッチの面にハンダ付けします。
フラックスを塗り、ICを乗せ、テープなりクリップなりで仮止めし、ピン1本ずつハンダ付け。
隣のピンとブリッジしたらハンダ吸い取り線で吸ってやればよいです。
16ピン全部ハンダ付けし終わったらテスターで導通チェック/絶縁チェック。これが大切。
正しくハンダ付けができたら足(両端オスのピンヘッダ)を付けます。足は両側の太さが違います。
ICソケットには細い方が刺さります。太い方は変換基板と土台の基板のどちらにも刺さります。
ということは、ICソケットを使おうが使うまいが「太い方を変換基板にハンダ付けする」と覚えて問題ないでしょう。


変換基板にピンヘッダをハンダ付けするときにコツがあります。
まっすぐハンダ付けしたつもりでも結構斜めにゆがんでるもので、ICソケットや土台の基板に上手く刺せないことがあります。そんなときはICソケットを補助具として使います。製作でICソケットを使わない場合は別途用意してください(何ピンでもよいが幅は600milで)。
そしてICソケットにピンヘッダを刺し、その上に変換基板を刺します。その状態でハンダ付けします。
つまりICソケットの上に完成した状態を組み立ててからハンダ付けするのです。
…当たり前といえば当たり前の方法ですけどね。

■本体の設計
AD725のデータシートに、今回の製作にちょうどよい回路図が出ています。
その図はPCとの接続例ですが、基本的にこれをそのまま作ることにし、基板接続用に一部変更します。また、基板接続以外の目的でもこのビデオエンコーダを使おうと思っているので、それも考慮します。


4FSCの入力にはオシレータでなく「微調整が効く」発振回路を組んで使うこともできます。
AD725のデータシートに、クリスタル発振子とインバータIC 74HC04Pを使った定番回路が掲載されています。その通り作ればよいでしょう。

今回製作するビデオエンコーダの回路図です。


出力はSビデオのみとし、コンポジットビデオは使いません。ピン10,ピン12はオープンにしておきます。

Sビデオ出力をPCでビデオキャプチャし、同時にRGBモニタへもつなぎたいので、入力したRGB信号を分岐してスルー出力しています。
ビデオキャプチャの画面は遅延がひどすぎ(GV-MVP/RX3。各種処理を切っても軽く1秒以上遅れる)、そちらを見ていてはシューティングゲームなどプレイできません。それでRGBモニタにも出力し、その画面を見ながらプレイします。

基板から出力される同期信号は復号同期信号(C-Sync)です。AD725にはV-Sync/H-Syncを入力するピンがあります。C-Syncを使うこともでき、その場合はVSYNC(ピン15)に+5Vを入力し、HSYNC(ピン16)にC-Syncを入力します。
基板接続以外の用途にも使えるよう、「C-Sync」と「V-Sync/H-Sync」の入力の組を切り替えるスイッチを付けています。
ここで注意することがあります。スイッチで「C-Sync」に設定したとき、スルー出力でV-Syncの端子に+5Vが出ないようにしなければなりません。そうしないとスルー出力の先に接続した機器が破損する恐れがあります。

AD725は+5Vで動作します。電源は安定化された5VのACアダプタを使います。
基板のコントロールボックスや筐体の電源ユニットからは+5V/-5V/+12Vが出力されています(JAMMA)。スイッチング電源ならその+5Vを使ってよいと思います。
今回は手持ちの9VのACアダプタを使いたかったので、3端子レギュレータで5Vに落として使っています。電源ユニットの+5Vの安定性が心配なら、+12Vをこれに通して使ってもよいでしょう。

部品のレイアウト案。

左上のICソケットは正方形型オシレータ用です。「微調整が効く発振回路」に取り替えられるよう、ソケットを使います。
左下と右上のピンソケットはR,G,B,GND/V-Sync,H-Sync(C-Sync)の入力端子です。基板接続以外の用途で使います(基板接続にはD-SUB15コネクタを直付けします)。

■完成
電源スイッチはありません。ACアダプタ接続と同時にオンです。AD725のチップ・イネーブル(ピン5)は利用していません。


動作確認

■画面の様子
製作したビデオエンコーダを使って基板をテレビに映しました(*1)。PCでキャプチャもしてみました。
キャプチャ機器:I/O-DATA GV-MVP/RX3 (画像処理ICはNEC 61153 MPEG Encoder)
コントロールボックス:KIC'S-91 (*2)
(*1)
実は私、テレビを持っていません。ここではRGBモニタにNTSC→RGBコンバータ(CXA1621)をつないだものを便宜上テレビと呼びます。従って一般的な家電のテレビでは異なる結果になる場合があります。ご了承ください。さらに言えば、一般的な家電のテレビを何台か試しても、それぞれ結果が異なることはあり得ます。
(*2)
基板からの出力をコントロールボックス経由でビデオエンコーダに接続しています。このコントロールボックスはRGB出力レベルと同期周波数(C-Sync)を調節できるボリュームが付いており、調節次第で画面表示が異なってきます。
つまり、基板からのR,G,B,C-Sync出力を今回製作したビデオエンコーダに直接入力した場合、私が得たのと異なる結果になる可能性があります。ご了承ください。特定条件下での動作確認でスミマセン。

まず、まともに映せないことで知られる「エスプレイド」(CAVE)。
テレビに正常に映りました。キャプチャ画面は一部が切れました。
キャプチャカードは水平周波数のずれを強力に補正してくれますが、元がずれすぎているためキャプチャ画面全体が下がり、下が切れています(ゲーム画面の向きで言うと右側長辺)。
微調整の効く発振回路に取り替えても、CXA1645のビデオエンコーダでも、こうなります。

最初に動作確認したとき、テレビ画面、キャプチャ画面とも白黒に映りました。後にコントロールボックスの調節ボリュームに気付き、最適な結果が得られるよう調節して動作確認をやり直しました。写真と説明文は期待した結果が得られたときのものです。

次に、まともに映ることが分かっている「エスプガルーダII」(CAVE)。
テレビに正常に映りました。キャプチャ画面でも正常でした。
Sビデオ出力、驚きです。RGB出力と区別が付かない…というのは言い過ぎですが、それに迫る美しさです。…やっぱり言い過ぎですか。もちろんキャプチャ画面ではなくテレビ画面で確認しています。


なお、「エスプガルーダII」はXbox360版が発売されますが、この記事を書いている2010年1月現在はまだ発売されていません(2010年2月25日発売予定)。画面写真は紛れもなく基板のものです。


■正常に映らない場合
製作物に誤配線やハンダミスがない、対象の基板は「映せる」15kHz出力のもの、ということだとして。
画面の映像が一見正常そうに見えて、特定のシーンで色味がおかしくなることがあります。
色が暗く濃くなるというか、変な色のフィルタがかかったようになるというか、そんな症状です。
原因として入力信号が強すぎることが考えられます。
AD725の仕様では、R,G,Bの入力振幅の最大値は714mV(p-p)です。
基板のRGB信号レベルがこれより高いことはざらにあるので、信号レベルを下げてください。

コントロールボックスを経由している場合:
RGB出力部にレベル調整のボリュームが付いていればそれで調節します。
C-Syncを調節できるボリュームが付いていればそちらも調節します。
KIC'S-91の場合、今回製作したビデオエンコーダとCXA1645のビデオエンコーダでは、最適な結果が得られるボリュームの合わせ位置が異なりました。さらに基板によっても異なるので慎重に調節してください。

ハーネスから直接RGB出力を取り出している場合:
AD725に入力する手前(75Ω終端される前)にボリュームを入れて調節します。R,G,B各線に半固定抵抗を直列に入れてください。

よく確認しよう、というか思い出そう
いやぁ、ハマったんですよ。正しく作れたはずなのに正常に映らない。本文「正常に映らない場合」は体験談です。
私は「KIC'S-91」というコントロールボックスを愛用しています。これにはRGB出力レベルのボリュームが付いています。側面写真の左端、縦に3個がそれです。1kΩ[102] x3個


ボリュームの存在を忘れていました。ボリュームが最大側にほぼ振り切れていました。
ゲーム内でホワイトアウトするシーンが正しく表示されていたし、ビデオエンコーダを使わずRGBモニタに接続すると普通の明るさ、色味に見えるので気付かなかったのです。
丸一日回路を見直したり実験したりして、原因が分かって気が抜けました。

さらに後から気付いたのですが、縦3個の隣にある「S」のボリュームにもやられました。
これの調節次第で画面が白黒になったり滅茶苦茶な色味になったり同期が外れて映らなくなったり正常に映ったり。その様子で同期信号の調節ボリュームだと気付きました。
SyncのSでしょうか。説明書を読んだのは遥か昔の購入時。それ以来、気にしたことも触ったこともないボリュームでした。参考までに、50kΩ[503]です。

話は変わりますが、側面写真のDIN8コネクタからR,G,B,C-Syncなどが出力されます。
ここにDIN8→D-SUB15ケーブルをつなぎ(純正品でそのようなケーブルがある)、今回製作したビデオエンコーダをつなぎ、テレビや録画機器へつなぐわけです。


普段は筐体抜き出しのモニタにRGB接続して基板を楽しんでいます。業務用モニタは大抵のRGB信号を受け付けて映してしまうものですから、結構外れた設定でコントロールボックスから出力しててもRGB接続だと気付かないんですよね。…と言い訳
それから、一般的なテレビではなく「NTSC→RGBコンバータ+RGBモニタ」という「テレビのような物」で映していることも、いろいろ影響していると思います。

コネクタのピンアサイン

コントロールボックス「KIC'S-91」の出力コネクタはDIN8です。これをPC-TV455など15kHzが映せるPCモニタへ接続するための、D-SUB15(2列)に変換するケーブルがあります。
それに合わせてビデオエンコーダのRGB入出力コネクタもD-SUB15にしました。

そして、そのようなわけでKIC'S-91のD-SUB15はPC-9801のディスプレイ端子のピンアサインと似ています。中途半端に似ているのが困ります。
C-SyncがPC-9801のH-Sync/V-Syncにあたるピンの両方に出ていることがちょっとクセモノで、回路図の切り替えスイッチとスルー出力の辺りで少し悩みました。

KIC'S-91のサウンド左右がPC-9801と逆ですが、これは気にしません。そもそもJAMMA規格で音声出力はモノラルなのです。コントロールボックスのステレオ出力の正体は、モノラルを単純に二股にして片方を逆相で出力したものです。

KIC'S-91
DIN8→D-SUB15変換ケーブル
1 Red
2 未接続
3 Green
4 GND
5 Blue
6 未接続
7 +5V
8 未接続
9 未接続
10 sound-L
11 sound-R
12 GND
13 未接続
14 C-Sync
15 C-Sync

変換ケーブルのD-SUB15オスを
外側から見た図
  
【参考】PC-9801
D-SUB15(2列)
1 Red
2 GND
3 Green
4 GND
5 Blue
6 GND
7 YS
8 GND
9 CS(C-Sync)
10 sound-R
11 sound-L
12 GND
13 AVコントロール
14 H-Sync
15 V-Sync

本体のディスプレイ端子を
外側から見た図


KIC'S-91 DIN8
本体DIN8メスを外側から見た図

部品について

AD725の他に特別な部品はありません。
基板のC-Syncを使うとき、シンクセパレータ(お馴染みLM1881N)は不要です。

AD725
AD725AR/ARZは現在も製造中なので、その意味では入手困難なICではありません。
しかし個人が購入できる形で扱っている店を見付けるのは難しいかもしれません。
自分は運良くイーエレでAD725ARを見付けることができました。

製作が終わって改めて調べたところ、Digi-Keyチップワンストップで1個から購入できることがわかりました。どちらもAD725ARZを扱っています(AD725ARをRoHS対応にしたもの)。
Digi-Keyは送料が高いので、これ1個だけの買い物はお勧めしません。
チップワンストップは一般消費者としての利用(個人の趣味での購入)はできず、
 個人事業主や企業の担当者といった立場からの利用に限られます。[FAQのページ]

2013/04 追記
昨年末頃から何とAmazonでAnalog Devices Inc.直々に販売していました。→AD725ARZ

オシレータ(発振器)
今回の製作では正方形型を使いました。長方形型でも使えます。大きさが違うだけです。
配線が増えますが、京セラ「EXO3 14.31818MHz」でも構いません。例えば、秋月電子で250円。

発振回路の部品の参考
発振回路を組む場合、AD725のデータシートに掲載されている回路を参考に部品を揃えてください。
トリマコンデンサは左右どちらにも何回転でも回ります。1回転したところで容量が元に戻ります。
インバータIC 74HC04P x1個
クリスタル発振子 14.31818MHz x1個
セラミックコンデンサ 47pF x1個、56pF x1個
トリマコンデンサ 30pF x1個
抵抗 1MΩ x1個、220Ω x1個

3端子レギュレータ
回路は5Vで動作します。9Vや12VのACアダプタを使う場合、またはコントロールボックスや筐体の電源ユニットの12Vを使う場合、3端子レギュレータで5Vに落として回路につなぎます(回路図のVCCはこの5Vから取る)。
3端子レギュレータは、数100mAタイプでは少ないので1A以上のタイプにします。
部品一覧には書いていませんが、発振防止のコンデンサも忘れずに。LM340T5のデータシートでは入力側0.22uF、出力側0.1uFとなっています。
今回の製作ではどちらも0.1uFにしました。CXA1645を使った秋月のキットがLM340T5 + 0.1uF + 0.1uFになっており、正常に動作しているのでそれと同じにしました。

変換基板+両端オスのピンヘッダ
AD725(SOP 16ピン)を2.54mmピッチの基板に乗せるため、ダイセンの変換基板D016を使います。
これは5個パック500円の商品ですが、店によってはバラ売りしていることもあります。
例えば、千石電商で1個170円(店頭価格)。割高です。
嬉しいことに若松通商ではバラ売り、ピンヘッダ付きで販売しています。しかも安い。WAKA-16

コネクタ類
R,G,B,各Syncの入出力コネクタは自由に決めてください。今回の製作ではKIC'S-91に合わせてD-SUB15(2列)を使いましたが、他にこのコネクタを使う理由はありません。

電源にACアダプタを使う場合、受け側のジャックを用意するわけですが、形状をよく確認してください。ACアダプタのプラグと微妙に大きさが合わないものを買ってしまい、差し込めなかったということはよくあります。それは以前の私です。プラグ/ジャックの外径、内径、規格名を確認しましょう。
店にACアダプタを持ち込み、その場で差し込んで確認すれば確実です。その際は店員に相談してから実行してください。

LED
パイロットランプ。お好みで。回路図にも部品一覧にも書いてありません。


AD725 RGB to NTSC ビデオエンコーダ 部品一覧 (回路図はここをクリック
部品名 部品番号 個数 参考価格/備考
ビデオエンコーダIC U AD725AR(ARZ) 1 1300円(イーエレ)
オシレータ(発振器) OSC 14.31818MHz 1 正方形型100円
抵抗 R1-R5 75Ω [紫緑黒金] 5 1個5円/100個100円
積層セラミックコンデンサ C1-C3,C6,C8 0.1uF [104] 5 10個100円
電解コンデンサ C4,C5 220uF 2 1個20円
電解コンデンサ C7,C9 10uF 2 1個10円
小型スイッチ SW 1回路2接点 1 4個100円(秋月電子)
その他の部品
3端子レギュレータ -- LM340T5 1 2個100円(秋月電子)
SOP(SOIC)変換基板 -- ダイセン D016 1 210円(若松通商
バラ売り、ピン付き)
両端オスのピンヘッダ -- 8ピン 2
Sビデオ端子(メス) -- -- 1 100円(秋月電子)

余談ですが

記事中に出てきた「基板接続以外の用途」とは、マイコンと接続してみるということです。
以前、マイコンで白黒のコンポジットビデオ出力をする製作をやりました。
AVR ATtiny2313 ビデオ出力 ブロック崩し〜アナログ入力〜

ここからさらに(マイコン1個で)カラー処理をするのは難しそうです。
それならビデオ出力処理を今回製作したビデオエンコーダに任せれば、と考えました。
そしたら、やっぱりそんなことをとっくにやってる人がいました。Uzebox
できるんですね。面白そうです。


久しぶりに基板関係の工作ができて満足です。
今回の製作物と記事はとても意義のあるものだと思っています。

ビデオエンコーダを必要とする人は、あまりいないかもしれません。
いざ必要となったときは、記事中で紹介した製品を買えば用は足ります。
しかし自作で味わう面白さは魅力的です。

ネットで自作のビデオエンコーダを検索すると、CXA1645を使った製作例が
見つかります。自分も秋月で買ったキットを持っていて、基板のプレイを
PCでキャプチャするときに使っています。
ですがCXA1645は、現在ではもう手に入らないと思ってよいICです。
せっかく製作記事を見付けても同じ物が作れません。

別のICを見付け、同じ機能の物を自作できた。そのICはまだしばらく手に入る。
「AD725 RGB to NTSC ビデオエンコーダの製作」
これからビデオエンコーダを自作する人は、是非この記事を参考にしてください!


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